昨晩、無線配車でテレビ局の人を乗せてラブホテルへ向かいました。

「僕が戻ってくるまで、メーターを回したままちょっと待っててもらっていいかな?」

「もちろんです」

ちなみに車を停めた状態でメーターだけ回していると、一時間で約3千円上がります。

同じ一時間なら走り続けていた方がもちろん運賃は上がりますが、仮眠を取ったり車の外でストレッチをしたりしている間にも売り上げが伸びるのは素敵です。

今までも事故現場や火事の現場に記者さんを乗せて行ったことはありますが、ラブホテルは初めてです。


「実はホテルで死体が見つかったんだよね」

「えっ(゚Д゚;)」

「そんなに待たせないとは思うけど、他にもタクシーが来て入口の辺りが混み合うかもしれないから、少し離れた所で待っててくれる?」

「わ、分かりました」

電話番号を交換して記者さんを降ろし、指示通り少し離れた所に停車しました。

車を動かすよう指示があるかもしれない場所で待機するときには、電話番号を交換することになっているのです。

取材が終わって出て来たときに、乗って来たタクシーが見つからないと困りますからね。

自殺か他殺か、他殺であれば犯人が捕まったかどうかも聞いていなかったので、「おらっ、車を出せ!」と刃物を持った男が乗りこんで来たらどうしよう……と鍵をかけたまま外には出ませんでした。

待機している間、後ろの建物の中で死んだ人がいるのだと思うと背中の辺りが妙にそわそわしました。

ラブホテルで死体が見つかったとなれば痴情のもつれからの殺人を想像するものですが、いちゃこらするための部屋で何がどうなって険悪な雰囲気になるのかはうまく想像できません。

30分ほどで取材は終わり、戻ってきた彼と、ホテルで合流したらしい他のクルーをテレビ局で降ろして終了。

「六千円? なんか安いね。ひょっとしてメーター止めておいてくれた?」

「いえ、止めてないですよ?」

どうやら深夜料金が基準になっているらしい彼に、心の底からお疲れ様ですと挨拶してその場を離れました。

 

以降も平日の割に長距離乗ってくださるお客さんが多く、昨日は平日でありながら最終的に土曜日よりも売り上げが良かったです。

たまにこういう日があるから、思うように稼げない日があってもあまり気にしないようにしています。

一日の売り上げが悪ければ一週間のトータルで、一週間の売り上げが悪ければ一ヶ月のトータルで考えればいいのです。

一ヶ月の売り上げが悪ければ、その時はもやしを食べるまで(´-ω-`)

 

運転中だったので撮影はできなかったのですが、中州で乗せたお客さんを九大学研都市までお送りする途中、高速から見た福岡タワーのハロウィン限定イルミネーションがとてもラブリーでした。

でも柏原でお客さんを降ろしたときは、辺りがあんまり暗かったので怖かったです(T_T)

普段は夜道が暗いぐらいで気弱になったりはしないのですが、こんなときに限ってホテルで死体が見つかったことを思い出してしまうんですよね……。

それで、同僚の松永氏に電話をかけました。

かくかくしかじかで夜道が怖いので大通りに出るまで通話に付き合ってほしいと頼むCちゃんに、彼は優しく笑いました。

「大丈夫、一人じゃないよ」

「松永氏……!」

「ほら、カーブミラーを見てごらん。髪の長い女の人が見守ってくれてるはずだよ」

「馬鹿野郎!!」

電話をぶち切りしたあと、大通りに出るまで向こうからの電話には出ませんでした。

やっていいことと悪いことがあります。

しかし彼への怒りで恐怖が若干和らいだのもまた事実。

荒療治ってこういうこと……?

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